「これはいいね」
「この程度でいいのかよ。まだデスクトップのエクスプローラと比較して機能の制限が多いぞ」
「わはははは。もちろん、これで100%なんてことは言わないよ」
「じゃあ、なぜいいというの?」
「だって、WP7.5からSkyDriveは緊密に連携しているけれど、ストレージの全貌を見る手段は無かったんだ。それが得られただけでも役立つさ」
「それだけかい?」
「じゃあ、あえてもっと言おうか?」
「何を言うんだ?」
「1970年代後半から1980年前後までのマイコン黎明期、まだパソコンとすら呼ばれない時代と状況がそっくりだ」
「そっくりって……」
「リッチで十分なメインフレームの世界は存在した。雲の上にね。その世界からオモチャと揶揄されて原パソコンとしてのマイコンは存在した。事実、機能は驚くほど低かったぞ」
「たとえば?」
「紙テープの時代はファイルを管理する手段そのものがなかった」
「どうして?」
「だって、人間が適切なテープを探してリーダーにセットしないと読み出せないのだもの。コンピュータには管理しようが無い」
「ぎゃふん」
「フロッピーディスクというまだしも管理できる媒体が出てすら、状況はぐだぐだであった」
「どんな風に?」
「たとえば、NEC PC-8001のDISK-BASICだと、filesコマンドでファイル一覧が得られるのだが、結果をプログラムから受け取る手段は無い。まあ、スクリーンエディタ経由でソースに取り込むとか、ビデオメモリを直接読み込むとか、強引な手段はあり得るがともかく正規ルートは無い」
「えー。APIも無いの?」
「ちちち。APIという概念がそもそも無いのさ」
「なんだよそれ」
「そういう時代には、1つ1つの改善が大幅な使い勝手に改善につながった」
「つまり、この改善は1つのステップであり、未来には大きな更なる道が見えるわけだね」
「そうだ。これで終わりでは無かろう。たとえダイナモンド争奪に負けてもマージョ様はドロンジョ様となってカムバックするのだ」
「意味分からないよ」
「そういう意味で、現在の状況はマイコン時代そっくりだよ」
「他に似ていることってある?」
「たとえば、マイコンブームの先頭を走っていたはずのNECは、次々と来るライバルに劣勢を強いられた。小手先の対応としてCOMPO BS/80とか発売しても焼け石に水。逆転にはPC-8001という圧倒的な新機種を必用としたが後手にまわった」
「それで?」
「今は、Windows Mobileでスマートフォンの先頭を走ってW-ZERO3ブームまで引き起こしたMSは、後から来たiPhoneやAndroidなどに劣勢を強いられている。小手先の対応としてIS12Tとか焼け石に水。たぶん、もっと圧倒的な何かがいずれ出てくる」
「もっと圧倒的な何かって何?」
「iPhoneやAndroidも一瞬で時代遅れにするような何かだろう」
「根拠はあるのかい?」
「根拠というほどでもないが、ないことも無い」
「なんだよそれ」
「上のURLの文章の一部を引用しよう」
写真共有や Office 文書へのアクセスに SkyDrive を利用している方全員が、Windows Phone を使っているわけではありません (今はまだ、です )。
「今はまだ、ってなんだよ」
「未来は常に不明ってことだ」
「まさか」
「マイコン時代、マイコンの最強のブランドはアップルだった。いちばん高くて優秀だった。あれだけの解像度のグラフィックが出せる高速マシンは、他に滅多に無かった。それでいて、拡張スロットも豊富でサードパーティー製品による拡張も多彩」
「サードパーティー製品まで豊富?」
「なんとマイクロソフトまでソフトカードというアップル製品用の拡張カードを売っていたほどだ。主役はアップルで脇役がMSに見えたよ」
「今の、MSがiPhone用のSkyDriveアプリを出すっていうのと同じだね」
「構造的には同じだ。結局、ソフトカードというのは自社製品をアップルマシンで動かすためのハードだからね。他のアプリも実行できたけど」
「それが、その後で凋落するのだから、今のiPhoneブームも先は分からないってことだね」
「そうさ。歴史を見れば、驕れる人も久しからず、って事例で溢れている」
「具体的には平家?」
「MSだって、驕って凋落しただろ?」
「ぎゃふん」
「今のMSには、既に自らがナンバーワンだという奢りは無いよ。無いからこそ、今のMSには別の意味での強さがある。時代の先は読めないよ」
余談 §
「嬉しそうだね」
「何しろ、我が青春のマイコン時代が戻って来たような状況じゃないか」
「嘘付け、ずっとナイコンだったくせに」
「それすら、懐かしい」
「どうして?」
「だって、IS12T買うまで指をくわえて他社OSのスマホを見ていたのは、まさにナイコンの再来」
「ぎゃふん」