「ハーロックの文庫コミック3巻を読み切って、裁断してスキャンしてしまった」
「それで?」
「実は、うーん、とうなってしまった」
「なぜ?」
「実は、思っていたのと違うのだ」
「どう違うの?」
「マゾーンとラフレシアが地球に攻めてきてハーロックが戦う、というのがキャプテン・ハーロックだと思っていた」
「違うっていうの?」
「違う。だから、子供が見ても面白くない」
「じゃあ、実際は何なの?」
「松本ハーロックは敵と味方が割り切れない」
「どういう意味?」
「良く分からない他の存在もいれば、ラフレシアはハーロックとただ話をするだけのために来たりする。そして、ハーロック不在のアルカディア号を不意打ちする指揮官は処刑される」
「ハーロックとラフレシアは実は近い存在だってこと?」
「そうだ。腐りきった地球がハーロックは大嫌いだが、ラフレシアも腐った部下は嫌いだ」
「じゃあ、ハーロックとラフレシアが共闘して地球とマゾーンの腐った勢力を一掃するという筋書きだってあり得るじゃないか」
「そうだ。だからさ。最初に提示された敵味方のラインが書き換えられてしまうんだ」
「えー」
「そのことは、実は松本色が濃い劇場版1000年女王や、我が青春のアルカディアによく出てくる」
「ラーメタル人の1000年女王が地球の味方で、占領軍側だったラミーメやトカーガ人がハーロックの味方ってことだね」
「そうだ。そうすると、実はハーロックという作品はそのラインの書き換えを示した時点で終わることができるとも言える。未完では無くこれで終わっているんだ」
「えー」
「もっと分かりやすい例を出そう。ガンフロンティアは敵のスパイであるシヌノラが寝返ってトチロー達の味方になる」
「シヌノラがトチロー達と寝て彼らを味わうんだね?」
「いや、それは意味が違うから。ともかく、ガンフロンティアという話は、敵のスパイだったシヌノラがトチローの子供の母親になって終わる。そこで終わるのが妥当なんだ。なぜなら、妊娠とは敵味方ラインの決定的な書き換え完了を意味するからだ」
「海を渡るトチローの冒険も、ハーロックとシヌノラの子育ても話としては不要ってことだね」
「そうだ、物語はここで綺麗に終わっているのだ」
「でもその話がヤマトとどう関係するの?」
「だからさ。松本色の濃い『永遠に』なると、敵味方のラインの引き直しという現象が発生する」
「敵だったアルフォンが重核子爆弾の秘密を教えてくれるわけだね」
「敵の母星が未来の地球だったりな」
「しかも、あとから嘘だと分かってまた敵味方ラインが書き換えられちゃう」
「捻れた敵味方ラインは、2や完結編にも存在する。2はデスラーの立場がめまぐるしく変わる。サーベラーこそ悪で、ズォーダーが被害者側の立場に立ったりもする。完結編では、父親は敵なのに、息子は味方だったりする」
「同じ人種なのに分かれちゃうのだね」
「第1シリーズでも、ビーメラ星では地球人とガミラス人が区別されないで同じ側に立ってしまう」
「ひぇ~」
「その敵味方軸が曖昧かつ変化してしまうのが松本零士作品の特色であり、ヤマトもその影響を受けているのでは無いだろうか。とハーロックを今更読み終わって思った」
「ひぇ~」
だから §
「だからさ。りんたろうは、ハーロックが援助者である限り上手く描ける」
「劇場版999の世界だね」
「でも主役にすると上手く描けない。別のものになってしまうんだ」
「松本零士とどこかで感性がすれ違ってしまうわけだね」
「そうだ。だから、松本ハーロックとりんたろうハーロックははっきりと別物として扱う必要があると感じた」
「それで?」
「これまで前提にしてきたハーロックは結局りんたろうハーロックだったのだ。そういう意味で別の世界があり得るという気がした」
「でも、そも別の世界はアニメでは不発に終わったわけだね?」
「そうでもない。ヤマト2にそういうテイストが出ている」
「どこに?」
「母星を離れ宇宙を流浪するモチーフはハーロックではなくデスラーに与えられる。そして、敵の総大将であるズォーダーによって理解されるのだ。ハーロックがラフレシアに理解されてしまうのと同じだ」
それゆえに §
「それゆえに、ヤマト2は実は解釈の難しい難解な話になっている」
「どう難しいの?」
「敵味方を識別するラインが、実は表面的な見た目と違う」
「どう違うの?」
「一見して、ガミラスの残党と彗星帝国が手を組んで地球を襲うように見えるのがよく見ると違う。地球側はヤマトが反乱者で地球人同士で争い合っている。デスラーも情けない部下を撃ち殺すし、彗星帝国は大帝の意志に反して重臣が勝手にデスラーをはめてしまう」
「むうう」
「逆に、ズオーダーとテレサは命がけのゲームを同じルールでプレイしているようにすら見える。相互に価値を認め合っているわけだ」
「ひ~」
「そういう観点で見ると、敵味方ラインが単純な新たなる旅立ちが気に入らず、それを複雑化する永遠にが産まれてくる理由も分かる」