「小林さんの設定の特徴は、設定を見ているとそこから物語が立ち上がってくることだ」
「物語?」
「設定と設定をつないでいくと中間まで見えてくるのだ。それをつないでいくと物語がぼんやりと浮かび上がってくる。全てのデザイナーがそういうデザインをするわけではない。(小林さんだけの特徴とも言わないが)」
「それで?」
「うむ。問題はムサシービュー号だ」
「その名前で確定かよ」
「確かにムサシはシービュー号。特に第3艦橋がそうなっている」
「そこからどんな物語が浮かび上がって来るというのだい?」
「シービュー号ならムサシは海にもぐるはずだ。しかし、どこの海に?」
「地球?」
「宇宙船のムサシがわざわざ潜るものではない」
「イスカンダル」
「もうない」
「ガミラス」
「もうない」
「えーと、じゃあアクエリアス」
「それだ。ムサシが潜るべき海はもうアクエリアスしかない」
「潜ってどうするの?」
「大きな窓で海中を見るしか無い。しかも第3艦橋の窓から見えるのは海の底だ」
「アクエリアスの海の底を見るわけだね。で、何を見るわけ?」
「アクエリアスの海中にあるものといえば、アレしか無いだろう」
「重水プラントの基部」
「ちがうって。ヤマトの残骸だろう」
「えー」
「というわけでHyper Weaponを確認した。ムサシはヤマト復活計画に先んじて2210年に作られている設定だ。だから、沈んだヤマトを見られる時系列だ」
「まさか。あの窓はヤマトを見るためにあるもの?」
「事実かどうかは知らないぞ。そう考えると楽しい、というだけだ」
「ひ~」
「だからさ。アートというのは解釈に対する挑発なのだよ。従って、嘘でも間違っていても解釈を付けねばならない。しかし、アートは解釈されるために存在する。だから、ある一線を越えると急に音を立てて解釈が整合して1つの世界を見せてくれる」
「まさか、ムサシがあまりにヤマトに似ていないのは……」
「そうさ。それが挑発なのだ。つかまえてごらんなさい、という挑発」
「これって正しい解釈なの?」
「さあな。それは知らない」
「えー」
「アートのアマチュアをなめるな。正規のアート教育なんて受けたことが無いからな」
「得意そうに語ることか!」