「なぜ、せたぶんに?」
「昔ね。あなたもSF作家になれるわけではない、という本を読んだことがあるのだ」
「内容は何?」
「日本SF作家と初期アニメの関わりの話が印象に残る」
「SF作家になる本じゃないのか」
「で、その作者が生で日本SF作家と初期アニメの関わりを語り、しかも自転車で行ける距離だ。行かないのは嘘だと思って行ってきた」
没後80年 宮沢賢治・詩と絵の宇宙―雨ニモマケズの心 §
「整理券をもらったあと、時間が空いたので宮沢賢治を見てきた」
「それで?」
「強いて見たいテーマでは無いのだが、単に時間が空いたという理由で見たのだが、大当たりだった」
「どんな展示?」
「宮沢賢治関連の本のイラストレーションの原画などが展示されていたのだが、プロの本気を見た気がする。凄く面白かった」
「プロの本気?」
「普通、プロは全力で仕事をしない。余力を残す。でも、宮沢賢治となると、みんな本気を出してしまう、という気がした。気がしただけで本当かどうかは知らないが」
「じゃあ、文学というよりも美術の展示?」
「そうだね」
文学に描かれた世田谷―成城・多摩川界隈 §
「ついでにこれも見てきた」
「感想は?」
「成城・多摩川界隈は良く分かりません!」
「ぎゃふん」
講演会「日本SF作家と初期アニメの関わり」 §
「肝心のこれはどうだったんだよ」
「年齢を心配したのだが、そんな心配は無用だった」
「なんで? かなりの年齢だろ?」
「マシンガントークで、しかも聞き手を飽きさせない。トークのスピードは話ながらどんどん早くなって行くばかり。しかも、きちんと終わって質疑応答の時間もきちんと残す時間配分の良さ」
「手慣れた感じというわけだね」
「結局、最後まで時計を見ることは無かったよ。全く飽きなかった」
「で、内容は?」
「アトム、エイトマン、スーパージェッターなどの話がメインだね」
「やはりアトムか」
「でもね。アトムを始祖と位置づけず、宇宙船シリカを始祖と位置づけているのは少し新鮮だったかな」
「そんなアニメあったの?」
「いや、人形劇」
「シナリオとしてはアニメでも人形劇でも大差ないのか」
「そうそう」
「でもさ。この話と関係あるの?」
「ある。原作:星新一だから!」
「ぎゃふん」
「とりあえず、とても書けないような面白い話がいっぱいあった」
「特に面白かったのは?」
「それこそ書けない話だよ」
「あー、知りたい!」
「ダメ!」