2014年06月23日
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『コードネームはサターンV』販売開始

Written By: 遠野秋彦連絡先

「さて、小説【コードネームはサターンV】が販売開始された」

「いきなりここを見る人がいると思うので、簡単に紹介してくれ」

「Kindle用の電子書籍の小説だ。といっても、ソフトのKindleもあるので、別にKildleとして売られているハードを買わなくても読めるぞ」

「内容は?」

「表紙がサターンV付きのアポロ宇宙船ということから分かる通り、サターンVが印象的に使用される内容の小説だ」

「サターンVってなに?」

「アポロ宇宙船を打ち上げた三段式のロケットだ」

「それでポイントはどこにあるの?」

「うむ。この話には2人の主人公がいる。マニアの佐藤有紀と、探偵の鞍馬七郎だ。地球を守る戦士になって戦う佐藤有紀視点の物語と、彼を監視する鞍馬七郎視点の物語が同時進行するのだが、実は同じものを見ているはずなのに2人の物語が矛盾するのだ」

「矛盾しちゃダメじゃん」

「いやいや。この矛盾は親切なヒントなんだよ」

「まさか」

「この小説には隠された真実がある。矛盾はそれを暴き出すためのヒントなんだ」

「どんなヒントだよ」

「読み始めて、あれ、これはおかしいな、と読者が首をひねる。そこから第3の読者の物語が始まるのだ」

「そんな難しい作業を読者に要求していいのか?」

「フェイクの情報は多いが、それらはフェイクだから実はどうでもいい」

「フェイクの情報って?」

「たとえば、黒闇と赤闇が出てくるのは山田ミネコのコミックに由来するが、赤闇から赤影を連想して【仮面の忍者赤影】に至り、白闇が出てくる根拠は実は赤影に白影が出てくるからだ……という話は実は本筋とは何の関係も無いフェイク情報なのだ」

「じゃあ、本文で言及される青闇は?」

「赤影に青影が出てくるからだ」

「おいおい。そんな話は若い読者に通じないだろう?」

「大丈夫。だって、全部本筋と関係ないフェイク情報だもの。なまじ知識があればあるほど迷うように出来ているから。知らないことはむしろ強みだ。正解に一直線で行ける」

「じゃあ、正解って何よ」

「それは読者のためのお楽しみだ。ここで君に語れるか」

「ケチっ!」

若干懸念 §

「僕が気になるのはさ、某セーラー服戦士のアニメとは関係ないと言いつつ、セーラーレオタードというアイテムが登場して、変身して戦うことだよ」

「ははは。そのことか」

「笑い事ではないだろう」

「実はぜんぜん関係ないんだ」

「でも似てるじゃないか」

「表面の類似に気づいて、同じようなものを期待して読むと裏切られるように意図的に書かれている」

「なんで?」

「だってもともと関係ないから」

「では僕らは読むとどこに連れて行かれるんだい?」

「月だ」

「黒猫のルナシーはどうなんだよ」

「実はルナシーという名前には作品のテーマと関連する重要な意味が仕込まれている。月を意味するルナを使用しているわけではないのだ。結果としてアナグラムを作成したらルナという2文字を含む名前になったに過ぎない。まあサターンVで打ち上げるアポロ宇宙船の行き先ではあるので、ルナでも悪くはない」

「どんな意味だよ」

「これは応用問題だね。読み終わって余力のある読者は考えてみよう。ハッと気付くのが10秒後か10年後かも知れないけれど、分かってしまえば難しくないよ」

もう一度懸念事項? §

「懸念はないんだね?」

「まあ、あるとすればあるな」

「何だよ」

「いろいろと意図があってこの小説は成立しているのだが、その意図が分かっていない段階で否定的に評価されるかもしれない」

「たとえば?」

「この小説、実は矛盾が多い」

「分かった。設定が甘いとか貫徹されていないとか、そういう風に見えるわけだね?」

「そうだ。実際には謎を解く分かりやすいヒントとして分かりやすい矛盾をいろいろ仕込んである。しかし、【作品は無矛盾であるべき】と思って欠陥だと思い込むと、金を取る資格も無いほどに欠陥だらけに見える」

「わはは」

「逆に、こんな簡単な答えをもったいぶって言い過ぎだ、という批判も想定できるけれど、誰でもその気になれば正解に行けるように用意した謎だから、答えは簡単だよ。あまりひねりすぎると誰も正解に行けなくなるからね。だから、答えは凄く簡単。分かってしまえばもったいを付けるような話でも無い。それは最初から意図通り。知恵の輪とか頭の体操のたぐいはそういうものだ」

「分かった。結局、フェイクの海から真実をすくい取る娯楽なんだね?」

「そうそう。もっとも、真実はいつも1つと言っている子供の言い分を信じる必要なんてない。真実は複数あっていいんだよ」

「そんなことがなぜ言える?」

「歴史的事件の証言を集めると、誰も嘘を付いていないのに矛盾した情報が出てくる。人の主観というフィルタを通すと、同じ出来事が違って見えるものさ」

「じゃあ、この小説にも違った解釈があるの?」

「あるかもしれないよ」

「それは不正解?」

「とんでもない。君が信じる答えならそれが君に取っての正解だ」

「いいのかよ、そこまで言って」

「作者が用意した正解よりも、より矛盾が少なくすっきりと解釈できる答えなら、そっちの方がいいぞ」