「spamで【日本若者は真実な歴史を勉強すべき、戦争を避けろ。】ってメールが来たから笑ってしまった。いろいろな意味でおかしい」
「分かった。君は若者じゃないのに【日本の若者】よばわりされて笑っているのだね」
「それもあるが、それだけじゃないな」
「【真実な】じゃなくて、【真実の】だってことだね。助詞が間違ってる」
「てにをはの間違いなんて日本人でもある」
「じゃあ、嘘つきの中国人が【真実の歴史】を云々するのは僭越だってことだね」
「違うよ。その批判そのものが間違ってる」
「えっ? なんで?」
「そもそも【真実の歴史】って言葉を持ち出した瞬間、こいつは馬鹿か嘘つきってことが分かる」
「ええっ? どういうこと?」
「もし彼が【真実の歴史】を知っているとしたら、全ての歴史研究家は仕事を失う。研究するまでもなく、彼が【真実の歴史】を知っている以上、彼に聞きに行くだけで良い」
「つまり、全ての歴史研究家が頭をひねっても分からないことが。彼には分かってしまうことはあり得ないんだね?」
「そうそう。だからさ。中国人だろうと日本人だろうとどこの国の人間だろうと【真実の歴史】とか【正しい歴史認識】とか言いだしたらまず馬鹿か詐欺師であることを疑うべきだ。とりあえず、主張に恣意的なフィクションが混ざっていることはほぼ間違いない」
「分かった。結局、【正しい歴史】に言及し始めたら日本人でも信じちゃ行いけないのは同じってことなのだね」
宿題 §
「戦争を避けろ、っていう最後のフレーズだけは正しい訳だね?」
「いいや。これは【戦争を望みます】の言い換えに過ぎない。だから信じてはいけない」
「なんで?」
「それは宿題ということにしておこう。なぜ仮想敵国内の反戦運動の助長は戦争の助けになるのか?」
「ひ~。聞かなかったことにするよ」