「1983年のアニメ映画だ」
「一言で言うと?」
「世界で初めて3DCGを使ったアニメ映画」
「見たことあるの?」
「昔見た」
「なんで今また見たわけ?」
「3DCGパートからアニメパートになった瞬間、ヘリの密度が上がる驚異の映像を再確認するため」
「実際に見たらどうだった?」
「実はぜんぜん違う映画だと分かった」
「えー」
「この映画はチャレンジングな映像のオンパレード」
- 逆さまの多用
- 鏡面の多用
- CGの使用
- セックス描写
- 残酷描写
- 特定の象徴的利用
- 人ではありえない軟体ポーズの不気味さ
- 中盤セックスシーンバックの模様
- ヘッドライトが流れる映像
- 虹のような縞模様
- 回転
- 各色のガラスの破片
- シルエットの多用
- ワニ
- 光と影
- 等々
「それで?」
「3DCGの利用とは大胆なチャレンジの1つでしかなかった」
「なるほど」
「これはいい映画だよ」
「どこがいいの?」
「デューク東郷に人間味を感じて終わるところだな。しかも結末は良く分からない。撃たれたのに歩き去る。これは何を意味しているのか分からない。単に当たらなかったという解釈もあるだろうし、デューク東郷は既に死んでいるという解釈もありだろう。撃たれて傷を負ったのに歩き去ったという解釈もありだろう」
「えー」
「そこは明確に分からない結末になっている。これはいい結末だ」
「なるほど。でも3DCGはしょぼかったわけね?」
「だからさ。これも1983年の作品で、アニメクライシス1983に該当する。演出センスがとてつもなくハイレベルなのだが、技術が追いついていない。いろいろな意味でね。まさに超えられない壁に正面から衝突している。それでもまあ、作品としてまとまったのは出崎監督の手腕だろうけれど、この凄みがあまり語られないあたり、客の方の壁も越えてしまった感じがあるな。ともかく見事な作品だ」