2014年10月30日
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三百字小説『α、β、我慢』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 月面基地γはピンチだった。長年競い合ってきた月面基地αとβはあらゆる利権を囲い込んでいたからだ。

 「今は耐えろ」

 仕方がないのでγは地球からの補給を求め、宇宙船が打ち上げられた。

 驚いたのはαとβだ。相手からの攻撃を常に警戒していた両者は、どちらもこれ大型宇宙戦艦による攻撃だと思って、お互いにミサイルを発射した。

 結果としてαもβも大半の施設が壊滅してピンチに陥った。

 γは2つの基地に支援の手を差し伸べた。

 αの指揮官は言った。「よくぞ過去の仕打ちを我慢して援助してくれた。だが、なぜだ?」

 「それは今までずっと我慢してきたからです」

 その言葉が地球に伝えられると、【α・β・我慢】と呼んで語り伝えたという。

(遠野秋彦・作 ©2014 TOHNO, Akihiko)

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