2014年11月27日
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三百字小説『三巻王』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 彼はコミックの3巻しか読まない男だった。

 ある日、俺は彼が嘘を付いているのではないかと疑った。彼が読んでいるコミックは確かに3と書かれていたが、どうも様子がおかしかったからだ。どう考えても5巻から出てくるはずのキャラクターが描かれている。

 「そのコミック、本当に3巻か? 寄越せ!」

 彼の手を無理矢理取り払うと、3だと思った数字は8だった。手で数字を半分隠していただけだった。

 「そら見ろ! これは3じゃない、8だ!」

 すると彼は答えた。

 「これはタイトル。【酢蛸の8ちゃん】なの。それからこれは合本の3巻。通常の単行本の6巻相当だけど、ちゃんと3巻だよ」

 俺は恥ずかしくなってタコツボがあったら入りたい気持ちだった。

(遠野秋彦・作 ©2014 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦