ゲンマ団は殺人集団だった。
正式名称は霧の中だが、指切りげんまんで契約するので、その名が付いた。
約束を破ったら敵でも味方でも客でも指を切る集団だったのだ。げんこつで一万回叩いたり、針千本を飲ませることすらあった。
だが、ゲンマ団で地獄派と穏健派の内部抗争が勃発した。
人々はそれをゲンマ大戦と呼んだ。
地獄派は穏健派に和平交渉を約束して呼び出すと皆殺しにした。
「ついにゲンマ大戦に勝ったぞ。我々の天下だ」
「でも嘘を付きました。指を切るのは嫌です」
「大丈夫だ。生き残ったのは我々だけだ」
だが、穏健派は嘘つきに針千本飲ませるべく、針山地獄で待っていた。ゲンマ団は全員が地獄に墜ちるのは確実だったのだ。
(遠野秋彦・作 ©2015 TOHNO, Akihiko)