「記事の内容の妥当性については、何も言わない」
「それで?」
「でも、確かにIT格差は存在すると思う。特に日本では露骨に」
「どこに格差があると思うの?」
「経験の質と量だな」
「どこが違うわけ?」
「スマホをぺたぺた触っているだけの人間と、PCをガンガン使っていた人間では経験する物事の量にもの凄い差が出る。更に、PCを使っていても無料のソフトだけを使っている場合と、有償のソフトを使っている場合でも、経験に雲泥の差が出る」
「でもそういう問題意識を言う人はあまりいないよ」
「そうだ。実は、経験の量が少ないと、その先に何があるのか直感的に分からない。類推が出来なくなるのだ。その結果、スマホがあれば何でもできる。OSSだけあればハッピーという勘違いが蔓延し、それを表明した意見が【ああ、それでいいのか】と思わせて殻を破る試みから人々をまた遠ざけてしまう」
「で、その結果起こることはなんだい?」
「ソフトを開発するときにスマホを無視できなくなるが、スマホの処理能力は歴然としてPCより劣るので、どうしてもスマホの性能でソフトの機能が頭打ちになってしまう」
「OSSは?」
「実績あるOSSのライブラリを使えばタダでいいじゃん、的な話はよくあるのだが、実際には上手く行かない事例が多い。発注者のやりたいことは上手く動かないが、対応する気は一切無いとか」
「有償だと違うわけ?」
「有償の場合、ダメでも【コストの問題で対応できません、ごめんなさい】ぐらいは言ってくれるが、OSSの場合は理解不能の彼らの正義の都合で対応しないと冷酷に言い切られてしまったりするしな」
「でも、OSSのライブラリを使えって指定は多いの?」
「多い」
「そういう問題に遭遇したら、その人は学ばないの?」
「学ぶ人もいるが、未遭遇でOSSの夢からまだ覚めていない人も多いよ」
「ひ~。じゃあ、スマホの問題はどうなんだよ」
「スマホの問題はちょっと違う」
「というと?」
「スマホには処理能力が低いという問題があるが、それを言ったら昔のPCはもっと低いわけで、致命傷では無いはずだ。何が致命傷なのか」
「それはなんだい?」
「タッチ操作は精度が低いので、設置できるボタンの数が減るのだ。つまり必然的に機能がシンプル化する」
「なるほど」
「しかもキーボードが存在しないとソフトキーボードも出さねばならないわけで、ますます画面が狭くなる」
「それは使いにくそうだ」
「だからキーボードは脇役。名前や住所や短いメッセージを打つだけ。それよりも、長文を読むことの方が多くなる」
「するとどうなるの?」
「送り出す情報は少なく、受け取る情報は多くなる」
「その結果どうなるの?」
「主体的な行動から遠ざけられて、受け取るだけの人間になりがちだが、公平無私の情報はまずタダでは落ちてこない」
「ええっ!?」
「結局、受け取る情報は宣伝、トンデモが多くなるが、それらは事実を伝えているわけではない。しかし、そればかり受け取っているとあたかもそれが事実であるかのような錯覚が生じるだろう」
「つまりなんだい?」
「この状態を【スマホを使っているのではなく、スマホに使われている】と呼んでみよう」
「主体性を持って使っているわけではないのだね」
「そう。メッセージを読んだらすぐ返事を書かねばならないとかね。あれはもう【使っているのではなく、使われている状態】だよ」
「ひ~」
「その行き着く先は何かといえば、社会の2極文化。支配層と被支配層に分けられる。被支配層は貧弱なスマホで満足するように誘導され、ひたすら支配され奴隷化される」
「怒りは感じないのかよ」
「怒りの矛先は隣人に向けられて、互いにつぶし合いを行う」
「なんてこった」
「たとえば、若者による高齢者層の攻撃なんかは、まさに問題をミスリードさせて隣人でつぶし合うように誘導されているわけだ」
「スマホは悪魔のデバイスじゃないか」
「そうだ。使いこなせないデバイスを持っていて振り回されていても、そんなものは人間の幸せではない」
「じゃあなんだよ」
「人間が主役に返り咲くために、PCを捨てよ、スマホを捨てよ、ネットを捨てよと言う運動なら賛成するぞ」
「反対する人も多いのだろう?」
「ネットは素晴らしいと主張する人は多いが、ネットには問題が多い。それにも関わらず問題など何もないかのように振る舞う人間は詐欺師か嘘つきだと思っていたが、実は最近もう1つのパターンがあることに気づいた」
「もう1つとは?」
「中毒だよ。中毒患者はそれを手放せないがゆえに、廃絶に反対する。その際、マイナス面は無かったことにされる。当然だ。マイナス面を認めると廃絶されかねない」
「でも廃絶した方がいいんだね?」
「それも1つの選択だ」
「スマホの無い時代を知らない若者は恐いんじゃないか?」
「そこは問題無い。人類のほとんどの生存期間で、スマホは存在しなかったが人類は生きてきた。無くても生きるのに問題は無い」
「PCは?」
「PCは条件次第であっても良いと思う」
「その条件とは?」
「ネット接続は制限した方が良いと思うよ」
「私は確かにリテラシーがありますということを社会に示せる人以外に使わせたら、危険だってことだね」
「そうだな」
「じゃあ、それでITスキル格差の問題は解消できると思う?」
「ある程度はできると思う」
「理由は?」
「何となくスマホがあるから使っている状態ではなく、自分で意識的にXXをやりたいからこの機器を使う、という意識さえ明確になれば、もうちょっと流されにくくなると思うよ。そうなると、隣の誰かとは違うことを行うわけで、経験の厚みも増えるはずだ」
「違うことを行うってのがポイントだね」
「そう。みんな同じことをしていたら、はっきり言って交換可能な人材にしかなれない。交換可能なら、安く使い潰されて終わりさ」
追記 2015/05/19 15:10 §
「この辺りの記事にも似たようなニュアンスは感じるね」
「人の幸せを否定するのがスマホだと思っている人は他にもいるんだね」