「2009年の鉄腕アトム原作のCG映画だ」
「それでどうだった?」
「そりゃもう、凄く良く出来た面白い映画だったよ」
「欠点は何か無いの?」
「原作通りに話が展開しないこと以外には何も致命的な問題は無い。というか、原作通りではないことは、別に普通のことなので、結局どこにも問題は無い」
「でも、あまり評判を聞かないよね」
「要するにみんな映画を評価できないってことだ」
「映画を評価するってどういうこと?」
「映画はその映画単体で筋が通っていればいいんだよ。何の予備知識もない人がぶらっと入って、2時間前後で納得して劇場を出る。そういう風に作らなければならない。予習なんて求められない。上映中に予備知識を仕入れることもできない。そうなれば、原作を前提にすることも不可能だ。そういう世界に存在している。そういう視点で映画は評価しないと意味が無い」
「じゃあ、この映画は良いわけ?」
「そうだ、きちんとヒロインがいて心の交流があり、映画独自の設定も映画の物語を進めるためにきちんと機能している。無駄が無い」
「映画として筋が通っているからオッケーなんだね」
「まあ筋が通っていないどこかの方舟とは大違いってことだがね」
「良く出来た映画はもともといくらでもあるわけだね」
「それを排斥してダメ扱いするのが、オタクという見る目が無いダメ集団だと思うよ」
「みんなこの映画を好きにならないとダメ?」
「そんなことは言ってない。映画なんて嗜好品だから、好きでも嫌いでも良い。でも、嫌いであることをダメ映画と言ってはいけない。他人の感性の否定になるが、たかが1人の客が別の客の価値観まで支配できるわけがない」
「【この映画は私ではない他の誰かのためのもの】と言わないとダメなのだね」
「そう思うよ」
「でも、ダメな映画は……」
「テクニカルな意味で技術的な欠陥作はあって、そこは批判されてもいたかたがない。好き嫌いとは別の次元の問題だ」