「はたと思ったのだがね」
「なんだい?」
「古代とメルダのメンタリティは本当に同じなのだろうか」
「何を今更」
「つまりだね。地球人とガミラス人のメンタリティの差はほとんどない。ここまでは肯定しても良いだろう。あり得ない設定だけどね。そもそも地球人の間でもメンタリティ差はあるから」
「まあそこは地球人全員が日本人だと言うことで」
「そもそも日本人の間でもメンタリティ差はあるから。地域差は大きいよ」
「ひぃ~。じゃあ全員が同じ県の……」
「同じ県でも」
「もういいよ。そこはみんな同じという夢の世界ということで」
「そいか。まあいいか。たとえ地球人とガミラス人が同じだと仮定しても、メルダと古代は本当に同じだったのだろうか」
「というと?」
「メルダというのは、完全に親離れして自立して活動している人物だ」
「収容所惑星に乗りこんで親を助けるのは自分の力だし、そのあと1人でヤマトに乗りこむと自力で生きるしかないってことだね」
「そう。同じ艦にユリーシャはいるが、彼女は宗教的に崇拝する対象であって、仲間ではない」
「じゃあ古代は?」
「古代は親を失っているが、事実上の親は榎本。同じ船に乗りこんで、何かあればサポートしてくれる。つまり古代はまだ完全に親離れしていない」
「つまりなんだい?」
「たった1人で敵艦に乗りこむような冒険的な振る舞いを古代は経験していないが、メルダは経験した。その差は大きい。実は、2199の古代は凄く甘い。あまり人生の試練を経験していない。致命傷になるような心の傷を背負っていない」
「メルダは背負っているわけだね」
「そうだ。しかし、2199古代はそれが分からない」
「甘いからだね」
「そうだ。だから古代は表面的な振る舞いの類似性によってメンタリティは同じだと見なすのだが、実際は同じなのではなく、差異が見えていないだけではないか」
「では、なぜそうなるのだ?」
「フラットな世界観において、主人公には精神的な試練を与えてはならないからだ。客がそれに耐えられない」
「些末な脇役には何をしてもいいが、主人公はダメなのだね」
「だから、EX178が沈んだと聞いてショックを受けるメルダに匹敵する【ショックを受ける古代】というシーンは存在しない」
「雪の拉致は?」
「EX178は沈んだから取り戻せない。雪は拉致されただけなので、取り戻せるのだよ。古代の行動は、ひたすら雪の奪還に向かうが、メルダにはEX178を奪還する手段がない。既に沈んで存在しないのだから。その差は大きい。ダメージはひたすら心に来る」
「古代の心の傷は雪を取り戻して解消できるが、メルダの心の傷は永遠なのだね」
「しかも、EX178に生存者がいるかもしれないから探しに行こうとは誰も言わない。だが、古代が雪を助けに行きたいというと誰も反対しない」
「本当にヤマト2199は、一部の人間だけをひたすら甘やかす鬼畜アニメやなあ」
「まあ、今どきは全ての登場人物を甘やかすスーパー鬼畜アニメも多いから、ヤマト2199だけがダメってことはないし、最低ってこともないぞ。今の常識から言えば、割とまともな方じゃないか?」
「これでまともな方かよ」
「無敵ガミラスいまいずこ。逆境に耐えて勤勉でよく働く日本人はいまいずこ」