「この前徒歩で聖蹟桜ヶ丘から山を越えて永山まで歩いたけどさ。凄い苦痛だった。完全にこの山の上り下りは車がないと無理というレベル。自転車で上がる? それはスーパー根性マンじゃないと無理無理。徒歩で上がっても死ぬ。みんな、こんなところには住めないよね」
「ひぇ~」
「まあ、場所によっては見晴らしはいいよ。でも、それだけ」
「日常を過ごす生活の場としてはイマイチなのだね」
「というわけで分かった」
「何が?」
「耳すまのジジイどもは気楽に車で移動しているが、少年少女は必死に自転車を漕ぐ」
「それで?」
「クレモナに行きたいわけだよ」
「は?」
「写真を見るとクレモナは平べったい街のようだ」
天沢家の家族争議に耳をすませば §
「聖司。あなたはなんでクレモナなんかに行きたいの?」
「だって、聖蹟桜ヶ丘じゃ坂だらけで足が死んじゃうから」
オマケ §
「雫なら坂のない街に行きたい気持ち、分かってくれるよな?」
「ええ。あなたがクレモナに行くなら、私は坂のない夢のイバラードを夢想して小説を書くわ!」
「雫、大好きだ!」