2016年07月07日
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三百字小説『ノー残業デー対くノ一残業デー』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 忍者の里は、金曜日を誰も残業しない【ノー残業デー】を決めた。

 そして伝統的に毎月13日は女性の忍者が奉仕残業する【くノ一残業デー】だった。

 ある月、13日の金曜日が発生した。

 その日は残業しても里の掟への違反。残業しなくても里の掟への違反となった。

 これはやってられない、ということでくノ一達は抗議した。

 里の長はしばし考えてこう言った。

 「変化の術で男に化けなさい。そうすればくノ一ではなくなり、残業義務も消える」

 だが、里の長は思いもしなかった。

 全ての13日に、くノ一達は男に変化したのだ。男の姿である限り、残業の義務は発生しない。

 里の長は降伏して残業デーは全て廃止された。

(遠野秋彦・作 ©2016 TOHNO, Akihiko)

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