2016年08月01日
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感想・映画「シン・ゴジラ」

Written By: トーノZERO連絡先

「なぜ見たの?」

「話題にする人が多いので流行り物はチェックしなければならない、という防衛的な理由」

「君自身が見たかったわけではないのだね?」

「まあ、全ての映画は見るまで分からないという意味では見た方が良いとは思ったがね」

「だからどちらを見るかと言われたらターザン:REBORNを見たかったわけだね?」

「そう。最初はターザン:REBORNを見る気でいた。しかし、映画が安く見られる日に映画をはしごするというアイデアを得た。調べたところ、連続した時間に上映している劇場があったので、同じ日に2本見ることにした」

「じゃあ、【全ての映画は見るまで分からない】という君も既に見たわけで、何か分かったかい?」

「そうだなあ。科学技術館の壁面の星形を背景に使ったカットは上手いと思った。他は全部乗れなかったなあ。正直眠かった」

「つまりなんだい?」

「トンデモを信じる青年が自分が信じるトンデモに基づく発言を執拗に繰り返したら偶然それが当たりで、あたかも事態を最初から予見していたかのように見えてしまったという話だろう。あり得ない描写の山盛りで感情移入できない」

「まともな登場人物は?」

「序盤で役立たずと切り捨てられた3人の学者がいちばんまともだったような気がするよ。ああいう常識的で冷静がことを言うと【役立たず】と切り捨てられる恐怖の時代ってことだ」

「じゃあ、いちばんダメだったシーンはどこ?」

「いっぱいあるからなあ。選べない」

「何か象徴的で分かりやすいものは?」

「内装に金が掛かった車両を爆弾としてゴジラにぶつけるというのは、凄く無駄。金が掛かった旅客用の車両をぶつけるなよ。どうしてもぶつけるなら、もっと安上がりな貨車に爆弾を積んでぶつけろよ。でも、その前に高速でゴジラにぶつけるためにはきちんと線路をメンテナンスして狂いを直してゴミも排除しなければならない。怪獣がどんと線路の上にいる状況では、線路もかなり歪んでいる可能性があると思うべきだろう。鉄道車両がそう簡単に動かせると思うなよ」

「劇場の様子はどうだった?」

「客はかなり入っていたけど、空いてる席は前や後にあったような気がする。終わった後で拍手する人が少しいたけど、多数派は一緒に拍手はしていなかった感じだな」

「それでお客さんは満足していた?」

「さあ。それは分からない。おいらは、大多数のゴジラ映画にも大多数の庵野作品にも不満を残すから、もともと不満を残す要素が合体して良くなる理由もあまり考えられないのでこんなものかと思う。でも、ゴジラ大好き、庵野作品大好きという人がいるのも事実。彼らがどう思ったのかは知らない」

「何に似ていると思った?」

「疎開シーンは要するに日本沈没だね」

「本題とは別に問題と思ったことはある?」

「自衛隊が無力すぎる。ゴジラに傷一つ付けられないなんて、せっかく協力した自衛隊が可哀想すぎる。むしろこの描写は害悪。自衛隊は無力だから予算なんか削れという意見も出かねない。あるいは無力だから米軍並みの武力を持つべき、という意見にも結びつきかねない。とても良くない」

オマケ §

「まあ、巨神兵東京にあらわるの時点で既に【こりゃあかん】という中身だったので、その延長線ならこんなものだろうな」

「巨神兵東京にあらわるって何が問題だったの?」

「問題は多いが、要するに物語と映像が噛み合っていない」

「シン・ゴジラも同じってこと?」

「そう。映像はリアル指向なのに、物語はファンタジー指向で噛み合っていない」

オマケ2 §

「何か語ってよ」

「昔は怪獣が日本特撮をダメにしたと思っていたが、古い特撮映画をもっと見た結果そうではないことが分かった。怪獣が出ていない日本特撮でもダメな事例がいくらでもあった」

「じゃあ、怪獣でもいいの?」

「面白い怪獣映画は存在するが、怪獣で面白くするのはかなり難しい。あまり良い選択ではないと思うよ」

「怪獣が好きな人は面白いと思ってるんじゃないの?」

「そりゃ好きな怪獣が出てくれば嬉しいだろう。でもそのことと、物語が面白いかは別の問題だよ」