2016年09月06日
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感想・映画「マジカル・ガール」

Written By: トーノZERO連絡先

「2014年のスペイン映画だが、下高井戸シネマで上映していたので見てきた」

「それで、どうだった?」

「すんごい面白かった。映画は途中がいくら眠くても最初が印象的で最後が死ぬほど面白かったら凄い面白い映画として記憶されるという経験則をそのまま体現したような面白い映画」

「つまり、魔法少女?」

「いやいや。日本では何が何でも【日本の魔法少女をテーマにした映画】として宣伝したがっているようだが実際の中身はそんなものではない。というか、確かに重要なモチーフではあるがそれ以外の要素も極めて多い。手の中の物が消えてしまう手品の方が重要。これが最初と最後に入る。消える手品で始まり、消える手品で終わる」

「じゃあ、面白い部分が魔法少女ではないとしたら、何が面白いの?」

「最後の最後に、正義の味方的な先生が現れて、憐れな被害者の女性の仇を取るという構造に収束するかに見えたが実はそんなことはなくて、女性が嘘を吹き込んだことに先生が気づいて思わず脅していた男を殺して、その場にいた関係ない男も殺して高価な服とアイテムを持った老い先短い女の子も殺して何もかもスカッとケリを付ける。WikiPediaに書いてある【物語】なんて嘘っぱちもいいところさ。実際は魔法少女に憧れる女の子もその父親も物語の軸ではない。最初に登場する女の子と教師が最後に登場してまた終わる。死んでしまう憐れな父娘は物語を転がしていくためにだけ登場する存在なのだ」

「他に何か面白かったのは?」

「この映画、元教師が二人登場し、会話する。その会話が政府の教育行政批判なのだが、今の日本の状況も大差ない。そこは面白かったね」

「他には?」

「スペイン映画なのに日本語の歌が流れる。作中にもエンディングにも流れる。面白いね。女の子の部屋に貼ってあるポスターは日本の魔法少女アニメ風だ。これも面白いね」

オマケ §

「日本人の大半はおそらくターザンREBORNのどこが見どころなのか分からない。そして、おそらくこの映画も日本人の大半は分からない」

「えー。日本語の歌が流れるのに?」

「その通りだ。日本を意識した映画であり、日本の歌が流れるにも関わらずおそらく日本人の普通の感性では手が届かないところに存在する映画だろう」

「なぜそう思うの?」

「日本風のアニメが題材になっているにも関わらず、評判を直接聞いたことがない」

「でも、君は喜んで見たわけだね?」

「そうだ」

「それは君が普通の日本人と違って賢いという表明?」

「いや。そうじゃない。この映画のお約束を掴んだからだ」

「それはなに?」

「この映画は魔法少女もの【ではない】と早期に分かったこと。そして、全く無関係に見えた 描写がどれも最終的にリンクしてくるという認識だな。上から降ってきたのがゲロだと分かってやっと分かった」

「それだけ?」

「それともう一つ。これは昼顔という映画と同じく、人妻娼婦ものというカテゴリにも入るだろう」

「何も知らない夫が妻に裏切られる映画って燃えるわけだね?」

「そうそう。そのへんもやはり燃える要素」