彼女は、あまりの成績の悪さに郷里にいられずに隣村の馬牧場の息子と結婚した。馬に乗って牧場を見回っていると、郷里から神妙な顔の同郷の男がやってきた。
「何の用事でしょうか? 成績の話ならもう関係ありません。私は無知でも私の息子はクラスで一番ですのよ」
「ショックだろうと思いますが気を確かに聞いて下さい」
ごくりと彼女は唾を飲み込んだ。
「実はお父上の訃報のお知らせを持ってきました」
「訃報ってなんですか?」
「死去したというお知らせです」
「じゃあ訃報のお知らせって、死去したというお知らせのお知らせですか?」
お知らせのお知らせというあまりの冗長表現に彼女はショックを受け、馬から落ちて落馬した。
(遠野秋彦・作 ©2016 TOHNO, Akihiko)