「評判がよろしくないようだが、凄く面白かった」
「どんな映画?」
「押井守監督のイノセンスを自分なりに実写で作り直した感じだな。セックス用アンドロイドにもっと良い結末を付けてあげるための映画」
「なぜそう言い切れるの?」
「似ている要素が多数あるのだが、決定打は通信機が入っていた鞄に人形が入っていたこと。更に最後は赤ん坊で終わるのだが、結局イノセンスでは子作りこそ最も手っ取り早い人造人間願望の成就ではないかと言っていてまさにそれ」
「なぜ評判がよろしくないの?」
「WikiPediaを見ていると『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』とかアシモフのロボット三原則のとの類似性の話があるのだが、それではこの映画がむしろ分からなくなる。そこにポイントは無いんだ」
「つまりなに?」
「おいらのような、イノセンスが好きな人間にこそ楽しめる作品であったと言える。何しろ、別の解釈で作られて別の結末が付くイノセンスだからな」
「どこが最大の違いなんだい?」
「人の意識は機械に入らない。機械の意識そのものが進化するのだ」
「じゃあ、イノセンスとは違うところで、どこが最も面白い?」
「人間には理解できない答えに到達して、人の先が示されるところだな」
「なるほど」
「いやまて。少佐は既にその領域に行っていた。そういう意味ではテーマすらイノセンス的なのかもしれない」
オマケ §
「押井守を意識したのなら、犬と鳥が出てこないとダメだろう」
「実は鳥は出てくる。犬は出てこないが、オートマタが作る歩行動物メカが事実上の犬だとすると、鳥も犬も揃っているのだよ」
「なんてことだ」
「ちなみに、この映画はスペイン・ブルガリア合作だが、押井守はAvalonのロケでポーランドまでは行っている。割と東欧方面との相性は良いのかも知れない」