2017年02月02日
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三百字小説『値ギルの笛』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 次郎は、普段は温厚な紳士だが、ひとたび【値ギルの笛】の音を聴くと値切りの戦士になってしまい、いつも赤字ぎりぎりのラインで買い物を成功させてしまうのだった。

 ある日、銭湯の脱衣所に【値ギルの笛】が置き去りにされていた。

 これ幸いとばかり、商店街の店主一同で【値ギルの笛】を燃やしてしまったのだ。

 この笛の音さえ聴かなければ次郎は値切りを始めない。

 だが、次郎の奥さんが【昔のように値切ってきなさい】とヒステリックに叫んでから値切りが再会した。

 奥さんのヒステリー声は、【値ギルの笛】と同じ周波数だったのだ。奥さんも燃やすわけに行かない商店街は降伏した。

(遠野秋彦・作 ©2017 TOHNO, Akihiko)

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