「新ピカで【この世界の片隅に】を見てきた」
「ふーん。それで?」
「面白かったよ」
「どこが面白かった?」
「進駐軍の紙が入った残飯雑炊を行列してまで買い、しかも、犬猿の仲の夫の姉と一緒に死ぬほど美味いと感動するところ」
「ひでえ」
「結局さ、この映画は敗戦のトラウマをもう一度日本人に植え付ける映画なんだよ。序盤のお気楽さと後半のあまりのシビアさは、トラウマを植え付けるに十分」
「ひぇ~」
「焼け野原も着底した軍艦も見せてくれる。日本人相手に暴力的に振る舞う憲兵も見せてくれる」
「な、何か他に言うことは?」
「終戦で終わってしまう話は多いし、見ている側も終戦で終わってしまう人も多い。でも本当は間違い。行音放送あっても世界は時を刻み続けていた。時間は流れていた。そのあと何をしたのかが重要」
「つまり、ジープを写生する少年になるか、進駐軍の残飯雑炊を食うかが重要なのだね」