釣具店の店主はボランティアの救助隊に参加していた。
「走るぞ泳ぐぞ釣具店」が口癖だった。
ある日、海から上がってきた魚が言った。
「釣具店で売られている道具で我々は釣られてしまい、仲間が減りました。助けて下さい」
「いいだろう。でも、タダではイヤだ」
「では竜宮城にご案内しましょう」
竜宮城で夢のような時間が過ぎて陸に戻ると、釣具店は店主を欠いて既に潰れていた。
魚たちは釣具店が潰れたことに喜んだ。
しかし、釣具店の跡地に立った大手スーパーには、釣具店より大きな釣具コーナーができていた。
(遠野秋彦・作 ©2017 TOHNO, Akihiko)