2017年02月16日
遠野秋彦の庵小説の洞 total 1117 count

三百字小説『釣具店救助隊』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 釣具店の店主はボランティアの救助隊に参加していた。

 「走るぞ泳ぐぞ釣具店」が口癖だった。

 ある日、海から上がってきた魚が言った。

 「釣具店で売られている道具で我々は釣られてしまい、仲間が減りました。助けて下さい」

 「いいだろう。でも、タダではイヤだ」

 「では竜宮城にご案内しましょう」

 竜宮城で夢のような時間が過ぎて陸に戻ると、釣具店は店主を欠いて既に潰れていた。

 魚たちは釣具店が潰れたことに喜んだ。

 しかし、釣具店の跡地に立った大手スーパーには、釣具店より大きな釣具コーナーができていた。

(遠野秋彦・作 ©2017 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦