「BGVとして、久しぶりにさらば宇宙戦艦ヤマトのブルーレイを最初から最後まで通して再生したよ」
「オレンジの人のチェックなどで部分的には見ている訳だね?」
「そうだな。ゴーランドのミサイル発射とか」
「で、他の作業のBGVで再生したのだね?」
「そうだ」
「でも今更見て分かることなんてあるの?」
「実はある」
「まさか。何が変わったと言うんだ」
「ヤマト2202第1章を見た後だと言うこと」
「それでさらば宇宙戦艦ヤマトが変化するわけでもあるまい」
「ところが、見た印象は確実に変化した」
「どこが違うわけ?」
「いろいろだな」
「要約すると何?」
「さらば宇宙戦艦ヤマトは、演出センス、映像センスが飛び抜けて優れた奇跡の優秀作だってことだ。こういうものは、優秀なスタッフと金を集めればできるというものではない」
「だから奇跡なんだね?」
「そうだ。そういうアニメ映画は歴史上何本かある。でも、それらは狙って作れるものではない。結果として傑作が残るのだ。スタッフの才能の問題ではない。志の問題でもない。多くの諸条件が噛み合った場合にのみ奇跡は起きるのだ」
「では他に奇跡の作品と言えるのは?」
「劇場版の銀河鉄道999とか、劇場版のデジモンアドベンチャーだな」
「じゃあ、全部説明できないとしても、何か具体例を説明してくれよ」
「たとえばゴーランド艦のミサイル発射シーン。小型ミサイルの連打を行う光景を見せつけてそこに目を集中させておいて、いきないり艦首大型ミサイルが発射されてビックリする。同じようなテクニックはバルゼーでも使われていて、艦載機発進シーンと思わせていきなり甲板が回る」
「他には?」
「ザバイバルを射殺したあと、呆然としているだけの斉藤とか。あれは本当に死の瞬間を意識した顔だよ。実際ザバイバルの銃弾はヘルメットを撃ちぬいている。ヘルメットを残して頭を下げているから助かっただけ。本当に一瞬の判断と行動が生死を分けた」
「他にもいっぱいあるわけだね」
「そう。超ロングで見せるコスモタイガーとテレザート守備隊機のスケール感ある空戦とか。土方前艦長の命令を決行するの時に入る響くSEとか」
「そういうものは、単なる情熱ではなく冷静で緻密な計算で成り立っているわけだね?」
「そうだ。演出は技術であり、適材適所で正しく使用することで見る者の感情を惹起できる」
「そういう一歩引いた視線で見て、本当にさらば宇宙戦艦ヤマトは奇跡なのだね?」
「そう思うよ。あれはけして越えられない。技術的に稚拙な部分はあるから、部分的には簡単に越えられる。でも全体は越えられない。それは越えようと思って越えられるものではないからだ」
余談 §
「で、さらば宇宙戦艦ヤマトは孤高の奇跡という結論で良いのかな?」
「まだ先がある」
「先とは?」
「孤高の奇跡はトラウマを残すんだよ」
「は?」
「結局、そこまで行ったという実績ができたにも関わらず、誰もそこには行けないんだ」
「行けたという実績だけが残って、再訪できないことがトラウマになるのだね?」
「そう。あれはもう二度と再現することができない。奇跡が味方をしてくれない限りはね」
オマケ §
「それは、ヤマト2202はさらば宇宙戦艦ヤマトを越えられないという意見なのかい?」
「いいや。まだ完結していない作品を論評できるほど、おいらは未来透視能力を持ってはいないよ。それより、ヤマト2はあれだけ良いものを詰め込みながらさらば宇宙戦艦ヤマトを越えられず、それがトラウマになったのだろうと思う……という話だ。ヤマトシリーズは、さらば宇宙戦艦ヤマトに匹敵する境地に到達しなければおそらくは終われない。だから続編は作られ続ける。しかし、到達はできなかった。何回作っても到達できないことが傷口を深くする」
さらばオマケ §
「さらば宇宙戦艦ヤマトは開けてはいけない箱だったと思うが、主力戦艦も開けてはいけない箱だったと最近気づき始めた。この話は機会があれば別途」
「それで?」
「アンドロメダもかなり危険だと分かった」
「バンダイの1/1000だね」
「この話も別途やろう」