鳩は凍っていた。
鳩派の鳩は争いごとを潔しとせず、中立を保っていた。しかし、結果としてどちらの陣営の洞窟にも入れもらえず、外で凍えることになった。
北の海から来た堕天使は凍った鳩を発見して可哀想だと思った。
そこで、鳩を北の海に連れ帰ったが、溶かすどころかますますカチコチになってしまった。
堕天使は悪魔にお願いした。
「鳩を解凍したいんです。何とかして下さい」
「よろしい」
平和の象徴鳩は、そのまま地獄の業火で焼き鳥になった。
「そ、そんな! 鳩が焼け死んでしまった!」
「え? 食べるには固すぎるから解凍したかったんじゃないの?」
まだ世界の平和は遠かった。
(遠野秋彦・作 ©2017 TOHNO, Akihiko)