2017年11月23日
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三百字小説『妖怪ぬりかっぺ』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 その喫茶店では職人が壁を塗っていた。

 客はそれを見て言った。

 「あいつ妖怪だったりしてな」

 「なんで?」

 「ぬりかべ、なんちゃって」

 「ぎゃはは」

 しかし、店員の話から田舎者だと分かると、客は「ぬりかっぺ」「ぬりかっぺ」とはやし立てた。

 さすがに職人も怒った。

 「その言い方は酷いじゃないですか。そんなこと言われると温厚な僕も普段見せない顔を見せちゃいますよ」

 そして職人は振り返った。

 顔には目も口も無かった。

 「ぎゃー!」

 みんな店から逃げ出した。

(遠野秋彦・作 ©2017 TOHNO, Akihiko)

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