「予想以上に面白かった」
「どこが良かった?」
「いろいろなところが」
「ネタ的なところでは?」
「水上機がグラマンJ2F。怪獣対策チームD・O・Gのドッグアロー各機は全て実在の機体だと思う。たぶん、ドッグアロー2号はF4D。ドッグジャイロと推定したヘリはフライングバナナだと思うんだよね」
「MAT風?」
「基地はZAT風だったと思う」
「それだけ?」
「おなら動力で飛んでいる飛行機がアフターバーナーを吹かすのは良かった」
「ふーん。それで本筋は?」
「うん。ヒロインのロリーが凄く可愛い。アクティブで協力的。ゾロリに好意まで持ってしまう。理想のヒロイン。それにも関わらず母親の若い頃である以上、絶対にゾロリリは結婚できない。非常に良い物語作りだ」
「それだけ?」
「鳥居マニアとしては、タイムトラベルで赤い鳥居を連続して通過する描写も良かった」
「えー」
「実は、この大筋はバック・トゥ・ザ・フューチャーそのものなのだ。でも陳腐すぎる過去の名作をなぞる理由がよく分かった」
「何か理由があるのかい?」
「ゾロリアンだ。タイムマシンにゾロリアンというネーミングがあるから、あえて話の流れを同じにしてあるのだ」
「なるほど」
「しかし、時間旅行で行く先は昭和30年代の日本。そこで描かれるものは必然的に違う」
「昭和30年代らしさの一環が怪獣ということだね」
「そうだな」
「話はそれだけ?」
「実はね。ロリーが【怪獣だ】というとゾロリそっちのけで向こうを見てしまう警官達は、実は有事には怪獣対策チームD・O・Gとなるメンバーなのだと思う。だから怪獣と言われると本気で探してしまう」
「なるほど」
「おそらく、この映画は【クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲】的な位置づけの作品で、きちんと評価を受ける価値がある作品だと思う」
「あるいは、【三丁目の夕日】的な作品ってことだね」
「そう。実はヒロインのロリーは【三丁目の夕日】で夢を持って集団就職で上京したヒロインのような存在。夢を抱いて寮で一人暮らしをして服飾デザインの勉強をしている」
「実際に劇場に行って、劇場の様子はどうだった?」
「子供連れしかいないし、しかも超ガラガラ。注目がなさ過ぎる気もするが、いずれ評価が広まる日がくれば良いと思ったよ」
オマケ §
「結局、どこがいちばん良かった?」
「どこまでも魅力あるロリーと、どこまでもかっこいいロン先輩、どこまでも善人のゾロリの迷いの無いストレートさはいいね。話が単純明快でとても分かりやすい。それにも関わらず屈折が深くて泣ける。何もかも綺麗に終わるのに、ゾロリだけは大切なものを失ってしまうのだ。しかも失われることは最初から決まっていたことなのだ」