2017年12月07日
遠野秋彦の庵小説の洞 total 908 count

三百字小説『無理な眠り』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 ケンは寝るのは好きだった。いつまででも寝ていたかった。何しろ、夢の中ではケン国のケン王なのだ。ついでに、建国の父だ。

 そこでケンは無謀な睡眠に挑戦することにした。

 千年、冷凍睡眠をするのだ。

 ケンはカプセルに入って冷凍保存された。

 ケンは二十四時間ケン国のケン王になることができた。

 夢の中で結婚して子供もできた。

 何もかもが最高だった。

 しかし、欲しいものを全て手に入れると、倦怠期がやってきた。

 はっきり言って、ケン王でいることに飽きてきたのだ。

 もうすぐ冷凍睡眠が終わると知ったケンは、ケン国の全てを破壊した。

 爽快な目覚めがやってきた。

 しかし、目覚めたケンが見たのは文明が崩壊して何もかもが破壊された未来だった。

(遠野秋彦・作 ©2017 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦