「結局さ。綺麗に殺菌消毒された70年代は本物の70年代ではないってことだ。本物の70年代と向き合ってみないとそれは分からない」
「それが宇宙戦艦ヤマト・イズ・デッドのテーマってことだね」
「そうだな」
「で、そもそも殺菌消毒された70年代ってなんだい?」
「殺菌というのは、たとえばさらば宇宙戦艦ヤマトのブルーレイで作画ミスやテロップが修正されているような状況。消毒というのは、その時代の周辺文化を全て切り落として猥雑な部分が全て欠落した状態で提供されること」
「同時代の様々な要素と連動しながら存在してたはずの作品を、そういう関係性を断ち切って取り出したところで、それは既に偽物、過去の残骸に過ぎないわけだね」
「そう」
「それはオタクの問題?」
「いや時代的に社会が語る70年代は殺菌消毒された偽物になっていることが多い」
「70年代を経験しているはずの年寄りまで偽物を信じているの?」
「そう。そこが一番根深い病理」
「なぜ経験しているのに偽物を信じられるんだよ」
「70年代の大半を彼らは実際には見ていないからだ。経験などたかが知れている」
「その先は?」
「宇宙戦艦ヤマト・イズ・デッドに書いた」