2018年10月11日
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三百字小説『大併用戦争』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 道路上の併用軌道を走る路面電車はピンチを迎えていた。車が増えすぎて電車がなかなか走れないのだ。

 「道路は我々路面電車のものだ」

 「いいや、時代遅れの路面電車は引っ込め。これからは車の時代だ」

 併用軌道を巡る電車対自動車の戦い、大併用戦争の始まりである。

 仲裁に入ったのはトロリーバスだった。

 架線から電気を受け取るがタイヤで走るトロリーバスは仲裁に打ってつけだった。

 「お互いに頭を冷やしてとろりとろりと行こうや」

 しかし、「おまえも通行の邪魔なんじゃ!」とトロリーバスは車と路面電車から袋だたきに遭った。

(遠野秋彦・作 ©2018 TOHNO, Akihiko)

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