道路上の併用軌道を走る路面電車はピンチを迎えていた。車が増えすぎて電車がなかなか走れないのだ。
「道路は我々路面電車のものだ」
「いいや、時代遅れの路面電車は引っ込め。これからは車の時代だ」
併用軌道を巡る電車対自動車の戦い、大併用戦争の始まりである。
仲裁に入ったのはトロリーバスだった。
架線から電気を受け取るがタイヤで走るトロリーバスは仲裁に打ってつけだった。
「お互いに頭を冷やしてとろりとろりと行こうや」
しかし、「おまえも通行の邪魔なんじゃ!」とトロリーバスは車と路面電車から袋だたきに遭った。
(遠野秋彦・作 ©2018 TOHNO, Akihiko)