2018年11月08日
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三百字小説『糸ノコの里、電ノコの山』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 菓子業界は仁義なき戦いに明け暮れていた。きのこの山、たけのこの里などが日々戦いを繰り広げて注目を浴びていた。

 そこで、日本ノコギリ社の社長が要らないことを思い付いた。

 「戦えば世間が注目してくれる!」

 日本ノコギリ社は、糸ノコの里と、電ノコの山という商品を開発した。

 「ついに勃発。糸ノコの里と、電ノコの山の最終対決!」

 そして、それらの商品を持った宣伝員がコスプレして街頭に立った。

 あまりに異様な光景だったので、人々は足を止めた。

 その時、電ノコを持った宣伝員が転んだ。

 電ノコが糸鋸に触れた。

 細い糸鋸は一瞬で切れた。

 「なんだあ、やっぱり電ノコの方が強いのか」

 急速に、みんなの興味は無くなっていった。

(遠野秋彦・作 ©2018 TOHNO, Akihiko)

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