2019年01月31日
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三百字小説『目黒のサマンサ』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 サマンサは、目白の豪邸に住む姉から日本に招かれた。

 「緑の電車に乗って目白で降りるのよ」とアドバイスされたが1文字しかサマンサは覚えなかった。

 緑の電車に乗ったサマンサは「目」で始まる駅で降りた。

 そこは目白ではなく目黒だった。

 そこで、壮大な雅叙園を見たサマンサはこれが行き先の豪邸だと信じた。

 姉の姿は見えなかったが、サマンサは予定通りそこで働くことにした。

 ビックリした姉は慌ててサマンサを目白に連れて行った。

 しかし、サマンサは目黒が気に入っていて、病気になってしまった。

 止むを得ずサマンサを目黒に戻すと彼女は元気になった。

 姉は言った。「サマンサは目黒に限る」

(遠野秋彦・作 ©2019 TOHNO, Akihiko)

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