2019年03月11日
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STAR TREK THE MOTION PICTUREの字幕で「デッカー艦長」は「デッカー大佐」の誤訳疑惑

Written By: トーノZERO連絡先

 STAR TREK THE MOTION PICTUREの劇場公開版の最後の方の字幕で「デッカー艦長」という表記が出ていて気になったので少し調査。

疑問 §

 カークが犠牲者の名前として「デッカー艦長」と言っているが英語では"Captain Decker"。これは「デッカー大佐」が正しい訳語ではないだろうか。艦長は正式にカークで、デッカーは副長だったので艦長ではおかしい。

確認事項 §

  • オリジナル英語音声 = Captain Decker
  • 劇場公開版 字幕 = デッカー艦長
  • ディレクターズ・エディション 特別完全版 英語字幕 = Capt Decker
  • ディレクターズ・エディション 特別完全版 日本語字幕 = デッカー艦長
  • ディレクターズ・エディション 特別完全版 吹き替え音声 = デッカー中佐

問題点 §

  • デッカーは副長だったので、艦長はおかしい。「デッカー艦長」の訳語には疑問がある
  • Captainは通常海軍の大佐を意味して中佐を意味しない。「デッカー中佐」の訳語には疑問がある

検証 §

まず日本語WikiPediaで検証

【階級は大佐→中佐(カーク提督の艦長復帰に伴い副長に格下げされたため降格】としか書かれていないが、中佐だとCommanderでCaptainにならない。

更に調査。

英語WikiPediaには有力な情報なし。(そもそもデッカーのページは無い模様)

DVDの英語字幕調査では以下の台詞を確認できた。

  • You'll stay on as Executive Officer.
  • Temporary grade reduction to Commander.

ここにはExecutive Officer(副長)の用語が出てくるが、これを中佐と解釈する方法はないようだ。従って、副長はExecutive Officerの用語で使用していると思われる。とすればCommanderは副長ではなく中佐である。

デッカーは確かに一時的(Temporary)に中佐になったようだ。

しかし、副長への降格に一時的(Temporary)という用語はない。恒久的に副長職に任命されたものと思われる。

字幕での用法 §

DVDの英語字幕をチェックすると、以下のような用語の使い分けを確認できる

  • 最初と最後のみCapt (Captain)
  • 中間の大多数Commander

従って、デッカーの階級は大佐→(一時的に)中佐→大佐が正しいものと思われる。

おそらく副長降格に従い大佐の階級が中佐に変更され、ヴィジャーからエンタープライズに戻らなかったことで大佐に戻ったものと思われる。

デッカーの階級は一時的(Temporary)に下がったものなので、下げられる理由が消失した時点で自動的に元の大佐に戻るものと思われる。(しかし、自動的に艦長に復帰することはないと思われる)

この解釈が正しいとすれば以下のような問題が発生する。

  • ラストシーンの字幕の「デッカー艦長」は「デッカー大佐」が正しい可能性がある
  • ラストシーンの台詞の"Catain Decker"を「デッカー中佐」と訳したのは正しくない可能性がある
  • デッカーの階級が大佐→中佐になったと説明している全ての日本語サイトは不完全である可能性がある

オマケ §

  • カークからデッカーへの呼びかけの"Commander"は「副長」というよりも「中佐」というニュアンスが強いかもしれない。(副長の呼称にはExecutive Officerが使用されている)
  • カークは割とネチネチとデッカーへの嫌がらせをしていることになる。マッコイから意見されるわけである。カークは正義のヒーローとは言いがたい。(ただし人間味はある)
  • 最後に犠牲者の名前としてCapt Deckerを口にしたカークは、デッカーへの嫌がらせは止めたとも解釈できる。カークは、ヴィジャーでの出来事でデッカーを認めて受け入れたとも言える。