2019年03月17日
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第2段階に入った歴史趣味なのか?

Written By: 川俣 晶連絡先

「どうも、この本を書いてから歴史趣味が変わってきたような気がした」

「何がどう変わったんだい?」

「これまで書いた本、活動は基本的に狭い地域性に立脚する郷土史的なものだったわけだ。大多数の人には関係無い話だ」

「それが変化したの?」

「上のハイキングの歴史は、要するにハイキングの昭和史だ。確かに野猿峠ハイキングコースをテーマにしてはいるが、それは歴史を描く方便として1つのハイキングコースを集中的に取り上げているだけで、それ単体の話をしているわけではない」

「日本人のハイキング観の変遷の話をしているわけだね」

「そう。しかし、過去の郷土史的な視点はたいへんに役に立っている」

「たとえば?」

「高尾の甲州街道沿いに色町があったのではないか……という話を検討する際には、下高井戸宿に飯盛り女がいたという知識がたいへん役に立った」

「なるほど」

「実は、モータリゼーションの発達が野猿峠ハイキングコースを終息させたという考察は、更に発展できる可能性があった」

「というと?」

「この本に書いた琵琶滝駅だが、消滅推定時期が野猿峠ハイキングコースの終息推定時期とほぼ同じなのだ」

「つまりなんだい?」

「琵琶滝駅のあたりまでは自動車で簡単に上がれるのだ」

「あえてケーブルカーの駅を作ってアクセスを提供する必要が無いってことだね」

「そう。観光客は上まで行くからケーブルカーに乗る必然性がある。しかし地元の施設の関係者は別に上まで行かないから自動車でもいい。観光客と同じ車両に乗り込んで移動する必要はない」

「つまり、取り組んだ課題と取り組んだ課題が複合して新しいテーマがでてくるわけだね」

「それだけなら昔と同じだ。むしろ、テーマが一般化するといった方が良い」

「この場合は、モータリゼーションの発達が日本社会の決定的に変質させた、という認識だね?」

「そう。それは、単に複数の認識が複合されたという話ではない。話の主題が【日本】というスケールで一般化されたのだ。そして、一般化されればこれまでとは比較にならないぐらい広範囲の人に届く」

「それにどんな意味があるの?」

「郷土史をいくらやっても【知る人ぞ知る】というレベルから上には行かない。しかし、主語が【日本】ぐらいになると、話が変わってくる」

「君も大きくなれる?」

「さあ。それは神のみぞ知るだ」

「で、モータリゼーションの発達が影響を与えたと思われる具体的な事例はなんだい?」

「今のところ、具体的に扱っているのは以下の課題だな」

  • 色町のあり方
  • ハイキングコースのあり方
  • 鉄道と駅のあり方
  • 日本人と宗教の関係
  • 日本人のレジャー意識の関係

「これらは本にまとまりそう?」

「さあ、それはまだまだ分からない」

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