2019年05月25日
トーノZEROアニメ感想宇宙戦艦ヤマト total 1431 count

戦艦シュペー号の最後(1957年)で確認できた戦闘中の効果音「パリン」

Written By: トーノZERO連絡先

「宇宙戦艦ヤマトにはもう関わらないことにしていたが、1件のみ補遺的に気付いたことがあるのでメモがてら書いておく」

「それはなんだい?」

「戦闘にガラスが割れるような音がする効果音、通称【パリン】についてだ」

「宇宙戦艦ヤマトの定番だね」

「しかし、ヤマトでの初出はおそらく第24話【死闘!!神よガミラスのために泣け!!】で最初から使われたものではない」

「それで?」

「実は1957年の映画【戦艦シュペー号の最後】を見ていて【パリン】を確認できたのだ」

「このあたりがルーツ?」

「具体的に他の事例があるのかどうかも分からないので、これがルーツ、元ネタと言えるのかははっきりしない。ただし、過去の利用例が発見されたので、具体的な考察は可能になった」

「どんな考察だい?」

「【戦艦シュペー号の最後】において、シュペーがイギリス艦隊と交戦している時に、被弾に際して【パリン】が使用されている。そのような意味では宇宙戦艦ヤマトの使い方と同じと言える」

「元ネタに忠実ってことだね」

「ところが、文脈を見ると状況がまるで違う。【戦艦シュペー号の最後】において、パリンが発生するのは、シュペーらが沈めた商船の乗組員が数十人収容されているタコ部屋の船室内なのだ。彼らは軍人ではない。また、軍人ではない以上捕虜でもない。行動が制約された船客ということになる。民間人として私物を部屋に持ち込んでいたのではないかと思われる。まあ船を沈められた以上、大した持ち物はなかったと思われるが」

「つまりなんだい?」

「彼らがガラス瓶を持っていても不思議ではないし、戦闘に際してガラスが割れないように配慮することもしていない可能性がある。そもそも、シュペーが沈んだ1939年はまだガラス瓶が多用されていた」

「前提が違うわけだね」

「【戦艦シュペー号の最後】における【パリン】は以下の条件が重なったことで説得力のある描写となったのではないか」

  • ガラス瓶がまだ多用される時代
  • 捕虜ではない民間人が多数収容されている部屋

「つまり、なんだい?」

「宇宙戦艦ヤマトでは、そういう文脈から切り離されて、緊迫感を生む効能だけを買われて【パリン】が定番化し、繰り返し使われたのではないか」

「話はそれだけ?」

「いや、まだある。実はヤマト1974終了間際になるまで【パリン】は使用されていない。それは、もともと【パリン】を効果的に使った戦争映画が少ないからではないか。ヤマトの企画時にバックグラウンドとして想定した各種映画では使われていなかったのではないか」

「まとめるとどうなるんだい?」

「宇宙戦艦ヤマトにおける【パリン】は、実は本来の文脈を無視した【お約束】であり、それゆえに【何が割れているのか分からない】と揶揄されるような存在だろう。だから、筋道を考えると【パリン】は無い方が良い。しかし、【あの効果音じゃないとヤマトじゃない】というファン層は厚いので延命されてしまったものではないか」

「演出的にはどうだい?」

「何かが壊れていることを的確に表現する分かりやすい効果音だと思うよ。しかし、本当に戦闘が想定されれば壊れやすいものはそう簡単に壊れないように配慮するのが普通だから、筋道としては場違いではないだろうか」

「結局、【戦艦シュペー号の最後】はあの時代、あの部屋だから【パリン】が似合うのであって、宇宙戦艦ヤマトには似合わないわけだね」

「もっとも、宇宙戦艦ヤマトも第2次大戦を宇宙で繰り返している作品だと思えば年代の件は無視してもいいと思うよ。ガラス瓶と思われる日本酒は持ち込んでいるわけだし」

「でも、民間人を数十人収容したタコ部屋は無いね」

「それは思い付かないねえ。せいぜいディンギルの少年などの少人数を乗せた記憶しかない。乗せてもタコ部屋ではなく個室になるし」

「まあ個室でもガラスが割れれば聞こえるかも知れないね」

「まあね。聞こえる可能性はある。そこは許容しても良いところかも知れない」

宇宙戦艦ヤマト

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