2019年10月10日
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三百字小説『オブライエンのアジサイ園』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 インドサイのオブライエンは「ここは自分のいるべき場所ではない」と思うようになった。

 オブライエンは動物園を抜け出して世界を放浪した。

 インドサイだからインドが理想郷かとも思ったが、インドはゾウや牛が闊歩する国であった。そこではない。

 どこかにサイの理想郷はないものか。

 だが、いくら探してもそんなものはなかった。

 失意のオブライエンに、【サイ園】という看板がチラッと見えた。

 これこそがサイの理想郷に違いないと思ったオブライエンはそこに飛び込んだ。

 だが、入ってみるとそこは【アジサイ園】だった。

(遠野秋彦・作 ©2019 TOHNO, Akihiko)

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