2020年10月10日
トーノZEROアニメ感想宇宙戦艦ヤマト total 1017 count

新宇宙戦艦ヤマト・再読の感想 (付・ダナサイト999.9感想)

Written By: トーノZERO連絡先

 さて、最近1000年女王のコミック版を始めて読んで中味の面白さに驚き、松本コミックを馬鹿にしてはいけないと思いました。そして最近、そういう問題意識でダナサイト999.9を読みました。

ダナサイト999.9の感想 §

 最初は分からなかったのですが、後からこの作品の本質が分かってきました。

 これは美男美女ではない普通の人たちが、超常の力を身に付けてダナサイターになったものの、やはり周囲の異質なるものと折り合いを付けて生きていく話であると。

 だから、アルカディア号から降りてくるのはトチローだけ。ハーロックは降りてきません。トチローは美男美女ではないから作品に溶け込めます。ハーロックはこの作品に似合いません。

 そういう意味で、セクサロイドのあとで美男を克服した松本零士は、この段階で美女も克服していることになります。

 だからこの作品でアルカディア号は味方っぽいスーパーパワーではあるものの、正体不明の異質なるもので終始します。

 つまり、作品の質が歴然として上がっていて松本先生は元気です。

 昔、アニメのダナサイト999.9は見ていますが、その時は面白くも何ともありませんでした。しかし、それは見方を間違っていただけかも知れません。

ならば新宇宙戦艦ヤマトってどうなのよ §

 そのような認識背景に、新宇宙戦艦ヤマトはどうなのか。

 正論1999年12月号【今再び飛び立つ「宇宙戦艦ヤマト」】を一読して改めて疑問が生じました。

 少なくとも大ヤマト零号は良くできた優れた作品でした。

 もしかしたら、新宇宙戦艦ヤマトも読み方を間違えていただけではないか、という疑問が生じました。

 というわけで新宇宙戦艦ヤマトの1巻2巻を発掘して読み直しました。

 やや展開が遅いものの、かなり印象が別物でした。

 最初に読んだとは【1000年間同じ名前を継承した宇宙戦艦ヤマト乗組員の子孫が大幅に改造された宇宙戦艦ヤマトに乗り込む】というかなり無理のある話と理解していました。

 しかし、よく読むと少し違います。

 羽黒妖に対して、養子に入った元乗組員の子孫かという疑問が呈されているとから分かる通り、名前を継承することは義務でも必須でもなかったようです。要するに名前の継承はどうでも良かったようです。

 それから、元乗組員の全ての子孫を検索するという話が出ていますが、候補者も膨大な数いるようです。一族の中でも時計を継承した者が特別ということなのでしょう。

 そうすると、元乗組員だけの秘密結社的なものが維持されたことになりますが、そすると重要なのはその秘密結社であって、名前ではないことになります。

 更に言えば、新ヤマトの乗組員は旧ヤマト乗組員の子孫だけではないことが明示されています。まほろばとのドッキングで移乗するはずだった人たちですね。ですが、これがブラックホール迎撃でキャンセルされ第2巻までには登場しません。

 ところが、正論1999年12月号【今再び飛び立つ「宇宙戦艦ヤマト」】に追加乗組員のヒントが書かれています。この記事には、具体的に【クラブのホステス、船員、大学教授、ヤクザ、公務員、不良少年、片目の老人、アル中の作家、ホモ、コンピュータ狂の中年男、漁師】等々と明示されています。

 これらの人たちがヤマトに乗り組んで涙を流すとは思えないので、どう考えても第1巻第2巻で提示された予定調和的な世界観は壊れます。ダナサイト999.9でいえば、松本美女的に登場したダナサイターの女の子が団子っ鼻の平凡な風貌の正体を晒すようなものです。

 更に言えば、正論1999年12月号【今再び飛び立つ「宇宙戦艦ヤマト」】では限界のある人間的な物語をやっていくことがはっきりと明示されていますので、乗組員がぶつかり合ったり悩んだりする話が展開されていくと思います。

 要するに、第1巻第2巻出てくる古代、島、雪、沖田、佐渡、羽黒はヤマトとの昔から縁で結ばれている特別な存在で、典型的なヤマト乗組員ではない、ということですね。

 それは大ヤマト零号での半端者ばかり乗っている乗組員構成とも似ているはずです。そのあたりは、大ヤマト零号でも十分に描かれていませんが、時間さえあればそれを活かした展開が描かれたはずです。

 そもそも新宇宙戦艦ヤマトは矛盾の塊です。スターシャの娘の名前がサーシャではなくスターシャで、しかも千年後も生きているとか。沖田十三の子孫は存在しないはずだとか。そもそも、古代と島が再会して感動するのはおかしいとか。(子孫同士は初対面のはずである)

 それらは、もうちょっとひねった何かのストーリー展開の伏線だった可能性もあります。

まとめ §

 というわけで、新宇宙戦艦ヤマトは以下のように再評価しました。

 まず弱点から。

  • ストーリー展開が遅い
  • 明かされない情報が多くイメージを掴みきれない (ムードだけで話が動いていく)
  • 予定調和的に話が進みすぎる (もっと、第2巻の最後の予定外のブラックホール迎撃のあたりから予定調和が狂い始めるのかもしれない)
  • 主人公の主人公性を担保している条件が、輸送船団唯一の生き残りなのか、古代進の子孫なのかはっきりしない
  • みんな泣きすぎる (それとも伏線なのか?)

 次に長所。

  • メカデザインは優れている。21世紀リメイク・ヤマトの中でも特に優れている部類に入る。(ただし、最初の扉絵のカットはレイアウトが悪く印象を低めてしまっている)
  • ヤマト復活篇の【地球めがけて移動するブラックホール】というアイデアを具体的に物語に落とし込むために【ダークィーン】【メタノイド】という設定が存在するなら、それは適切だと思われる。特に、実際に制作された映画ヤマト復活篇は【地球めがけて移動するブラックホール】というアイデアを活かすために異次元の人類というスケールの大きい設定を導入してしまっているが、新宇宙戦艦ヤマトはブラックホールを攻撃兵器として割り切ることで設定を単純化している。これは好ましい特徴である
  • 【まほろば】【羽黒妖】の存在は敵のスケール感の大きさとの対比で妥当である
  • 船体が真っ二つになった【雪風】の描写は大艦隊が全滅したという話よりも表現として分かりやすく、優れている
  • 時間を掛けて乗組員を集めている描写は物語のスケール感、宇宙戦艦のスケール感を担保しており、好感できる
  • 大松本ワールドの他作品と対比したとき、密度があまり高くないことが分かる。つまり、同程度の作品だとするとまだ明かされていない設定が多いはずである。それゆえに、変に思える箇所は、伏線だという可能性もある。それは完結するまで否定されるべきものではない。

宇宙戦艦ヤマト

同人小説(PDF形式、無料ダウンロード可能) §

小説推理サイボーグシリーズ (PDF形式、無料ダウンロード可能) §