2020年11月19日
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三百字小説『ガーリーなお下がり』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 母親が集まって愚痴を言っていた。

 「下の子ったらお下がりを嫌がるのよ」

 「子供なんてそんなものよ」

 「違うのよ。凄く高級だし、可愛いし、しかもぜんぜんお姉ちゃんが着てないのよ。嫌がって」

 「それは贅沢ね。でもデザインが悪いんじゃないの?」

 「ガーリーで可愛いわよ。ほら写真」

 「あらほんと。これなら余程のへそ曲がりじゃないとイヤとは言いそうもないわね」

 「そうなのよ。どうしてあの子ったら嫌がるのかしら」

 「そういえば、お宅に女のお子さん二人いましたっけ? 一男一女だったような気が……」

 「いないわよ。女はお姉ちゃん一人だけ」

 「えっ?」

(遠野秋彦・作 ©2020 TOHNO, Akihiko)

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