2020年12月08日
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宇宙英雄ローダンとイギリス海軍の巡洋艦HMS Goog Hopeについて

Written By: 川俣 晶連絡先

 昔、ドイツ人作家達が書いている宇宙英雄ローダンシリーズをたぶん250冊ぐらい読んだのだが、序盤の展開はおおむね覚えている。

 ローダンが最初に乗った宇宙船はスターダストだがこれはアメリカが打ち上げたもので、第3勢力のものではない。

 第3勢力最初の宇宙船は、トーラとクレストの宇宙船の搭載艇だったグッドホープで、次はトプシダーから奪ったアルコン艦のスターダストII。更にスプリンガーから奪ったガニメード。アルコンから手に入れたタイタンの順だったと思う。

 というわけで、第3勢力最初の宇宙船であるグッドホープは思い出深い。

 ここで興味深いのは、ドイツ人作家達の書いている小説でありながら主人公ペリー・ローダンはアメリカ人で、グッドホープは明らかに英語であるところだ。しかし、グッドホープはあまり軍艦の名前っぽくない。希望が前面に出ている名前だと思っていた。実際、シリーズでも【都市名級(都市名クラス)軽巡洋艦】などは軍艦らしい名前なのである。名前的にグッドホープはドイツ艦らしくないだけでなく、アメリカ艦らしくもない。

 さて、うっかり見落としていたのだが、【そもそもイギリス海軍は軍艦の名前っぽくない名前をいくらでも軍艦に付ける】のである。

 実は、装甲巡洋艦HMS Good Hopeは実在した。

 しかも、ドイツ艦隊と交戦して沈められるという経歴を持っている。

 ドイツ人作家が書く小説において、ドイツの軍艦が沈めたイギリスの軍艦の名前を主人公艦の名前にするとはどういうことか。

 もしかしたら、本来の構想は【グッドホープは敵の軍艦として破壊される】という結末が想定されていたのではないだろうか。