2020年12月31日
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三百字小説『アルテミスの勝手道』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 アルテミスは悩んでいた。

 月から地球に行くのが遠回りなのだ。

 「ゼウス様。どうすれば良いでしょう」

 「勝手道を作れば良いのだ」

 「でも、神が正規の道路を使わないのは人間に示しが付きません」

 「猫の姿で歩けば良かろう」

 アルテミスは白い猫に変身して他人の家の庭を突っ切って近道した。

 「こら、泥棒猫。池の魚を狙ってきたな」

 アルテミスは追い返された。

 そして、次こそ正規の道を歩こうと心に決めた。

(遠野秋彦・作 ©2020 TOHNO, Akihiko)

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