君は教科書になるのだ。
上司の命令を受けて僕は今日から生きた教科書になった。
僕が学校に登校した。
こんなのは卒業以来だ。
そして教壇に立った。
うん、これは初体験だぞ。
僕は生徒達を見回して言った。
「僕が今日から君たちの教科書になります。一緒に勉強していきましょう。ではさっそく教科書の1ページ目を開きましょう」
その時生徒の一人が言った。
「先生! この教科書、ただの教科書のくせに先生気取りです。不良品なので交換をお願いします」
教室の隅に座っていた先生がうなずいた。
「そうだねえ。ちょっと業者に連絡を取るよ」
僕は今日から不良品の返品教科書になった。
(遠野秋彦・作 ©2021 TOHNO, Akihiko)