2021年03月22日
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三百字小説『今日から教科書』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 君は教科書になるのだ。

 上司の命令を受けて僕は今日から生きた教科書になった。

 僕が学校に登校した。

 こんなのは卒業以来だ。

 そして教壇に立った。

 うん、これは初体験だぞ。

 僕は生徒達を見回して言った。

 「僕が今日から君たちの教科書になります。一緒に勉強していきましょう。ではさっそく教科書の1ページ目を開きましょう」

 その時生徒の一人が言った。

 「先生! この教科書、ただの教科書のくせに先生気取りです。不良品なので交換をお願いします」

 教室の隅に座っていた先生がうなずいた。

 「そうだねえ。ちょっと業者に連絡を取るよ」

 僕は今日から不良品の返品教科書になった。

(遠野秋彦・作 ©2021 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦