挺身隊は敵軍司令部を奇襲すべく適地奥深くに潜入していた。
だが、進退が窮まっていた。
前方には警戒厳重な防衛線。
後方には緻密な警戒網が敷かれていた。
前にも進めず後退もできなかった。
「隊長、いったいどうしたらいいんですか」
隊長は考え込んだ。死ぬ覚悟をして挺身隊に志願したが、司令部と差し違えるならともかく、こんなところでは死にたくなかった。
「自分に提案があります」と部下の一人が言った。
「なんだ」
「スマホの経路検索です。これで敵を迂回するルートを調べさせます」
「なるほど! それは名案」
敵を迂回して司令部まで行くルートは一つだけあった。
「よし、行くぞ!」
だが、スマホの電波を出したので既に敵に察知されていた。
(遠野秋彦・作 ©2021 TOHNO, Akihiko)