2021年06月28日
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三百字小説『下連雀のモモレンジャー』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 下連雀に、1970年代の人気特撮ドラマ、ゴレンジャーの紅一点、モモレンジャーに扮する人物が出没するという噂が立った。

 特撮マニアの僕は真偽が気になって出かけた。

 夜の井の頭公園にそいつは出現した。

 「見つけたぞモモレンジャー!」と僕は叫んだ。

 モモレンジャーはその場で立ち止まった。

 「あ、あの。恋人になって下さい。モモレンジャーの大ファンなんです」

 「断る」と言った声は男の声だった。

 「えっ? コスチュームの中味は男?」

 「何をがっかりしている」

 「嘘だー。せっかくモモレンジャーファンの女の子だと思ったのに」

 「愚かな」

 「何が愚かなんだ」

 「モモレンジャーのスーツアクターにはもともと男もいる」

 僕は再起不能になった。

(遠野秋彦・作 ©2021 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦