下連雀に、1970年代の人気特撮ドラマ、ゴレンジャーの紅一点、モモレンジャーに扮する人物が出没するという噂が立った。
                     特撮マニアの僕は真偽が気になって出かけた。
                     夜の井の頭公園にそいつは出現した。
                     「見つけたぞモモレンジャー!」と僕は叫んだ。
                     モモレンジャーはその場で立ち止まった。
                     「あ、あの。恋人になって下さい。モモレンジャーの大ファンなんです」
                     「断る」と言った声は男の声だった。
                     「えっ? コスチュームの中味は男?」
                     「何をがっかりしている」
                     「嘘だー。せっかくモモレンジャーファンの女の子だと思ったのに」
                     「愚かな」
                     「何が愚かなんだ」
                     「モモレンジャーのスーツアクターにはもともと男もいる」
                     僕は再起不能になった。
                    
                    
                    (遠野秋彦・作 ©2021 TOHNO, Akihiko)