2021年09月06日
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三百字小説『キー坊の冷房』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 キー坊の部屋に冷房が来た。

 暑い夏が涼しくなった。

 キー坊はすっかり冷房が手放せなくなった。

 それから秋が来て冬が来た。

 寒くなったらさすがに冷房は入れない。

 だが、クリスマスが来たとき、キー坊は冷房にお疲れさまと言いたくてスイッチを入れた。

 しかし、冷房はランプが点灯するだけで運転を開始しなかった。

 キー坊は焦った。

 涼しくなってからスイッチを入れなかったからすねたのだろうか。

 キー坊は慌ててメーカーに電話した。

 サービスマンがすぐに来た。

 「冷房機ってね、設定温度より室温が低いときは動作しないんですよ」

 キー坊が温度計を見ると室温は18℃だった。冷房の設定温度は27度だった。

(遠野秋彦・作 ©2021 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦