僕は人魚姫に恋をした。
「人魚姫、一緒に水中デートをしよう。そのために酸素ボンベも用意したんだ」
「まあ。王子様ではないけれど意外とイケメン。まあいいわよ」
「やった!」
「でも泳ぎが遅そうね。私の身体に捕まりなさい。私が泳ぐわ」
「分かった」
「でも、変なところは触っちゃいやよ」
「もちろんさ」
僕は人魚姫に抱きついた。
「きゃっ! 変態!」と人魚姫が叫んだ。
「えっ? ヒレしか掴んでないけど」
「女の子のヒレを掴むなんて失礼よ! この卑劣漢!」
僕はヒレを掴んだ卑劣漢になった。
(遠野秋彦・作 ©2021 TOHNO, Akihiko)