オーシャンズ・ウォーは事実に基づく映画を自称しているが、どこまで事実か簡単に確認した。
SS Lawton B. Evansは実在のLiverty Ship(リバティ船)である。
リバティ船は、アメリカにおける戦時急造船の一つでである。大量に建造されたが構造に問題があった。数隻がアメリカ国内に保管されている。保存されているリバティ船のいずれかがロケに使用されたと推定するが、ここは未確認である。
リバティ船は基本的に輸送船であるが、自衛用の武装(砲および機銃)は搭載していた。
Uボートについて §
SS Lawton B. EvansがUボートからの雷撃を受けたのは事実であるらしい。
しかし、雷撃を受けたのはHX228輸送船団で、22隻中生き残ったのはSS Lawton B. Evansだけだったらしい。
問題はSS Lawton B. Evansに撃たれた魚雷だが、不発だったらしい。映画の中では爆発しているようにも見えるがそこは良く分からない。
SS Lawton B. Evansが砲撃でUボートを沈めた事実はないようだ。
まあ、常識的に考えてUボートが水上砲戦で撃ち合うのは【可潜艦】としてのメリットを捨てる行為で、想定しにくい。非武装の商船を仕留める場合、高価な魚雷を節約するために乗組員を退去させた後で砲撃で仕留めることは考えられるが、そういう状況とは見えなかった。
アンツィオの戦い §
イタリアのアンツィオに連合軍が上陸したアンツィオの戦いで、SS Lawton B. Evansが支援を行ったことは事実らしい。
沿岸の砲台と敵機から砲撃を受けたこと、それに対して反撃を行って弾幕を張ったこと、5機のドイツ機を撃墜したことまでは事実らしい。
しかし、SS Lawton B. Evansが単独で砲台の破壊任務に向かったという話は事実かどうか分からない。乗員が上陸して砲台を爆破した行為も事実か分からない。命令を無視して作戦を継続したことも、確認できなかった。
武装 §
映画の中では武装が強化されていると言っているが、どこがどう強化されているのかは良く分からなかった。映画の中では爆雷を搭載していることになっているが、リバティ船への爆雷の搭載は確認できなかった。
リバティ船で、機銃を増やした武装強化型が存在するのは事実らしい。
考察・リバティ船の特設巡洋艦的な運用について §
映画オーシャンズ・ウォーの劇中のように、リバティ船を本格的な軍艦のように単独運用したことは考えにくいが、連合軍が戦力不足を補うためにリバティ船の武装を強化して上陸支援の火砲プラットフォームとして利用したことは推定できる。
映画の中で5インチ砲と言っているが、5インチ(127 mm)砲があれば支援砲撃の役に立ったと思われる。
しかし、弾幕に限った利用なのか、陸地を直接撃ったのかまでは良く分からなかった。