代々木上原の駅のホームで、酔っ払っているのかフラフラする男を見た。
1番線のホームの縁に近付いたり離れたり、ハラハラさせられた。
これは注意した方が良いかと思ったら、その男はホームの縁から落ちそうになった。
「危ない!」
私は彼の手を掴んで引き戻した。
「すいません。ありがとうございます。ちょっと飲み過ぎなんで。ホームの縁からは離れて電車を待ちますよ」
彼は笑いながらホームの縁から後退して行った。
これだけ離れれば安心だろう……と思ったらそこで転んで、そのまま2番線の縁から線路に落ちた。
私は慌てて駅員を呼んだ。
(遠野秋彦・作 ©2022 TOHNO, Akihiko)