2022年07月14日
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三百字小説『ハラハラする代々木上原』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 代々木上原の駅のホームで、酔っ払っているのかフラフラする男を見た。

 1番線のホームの縁に近付いたり離れたり、ハラハラさせられた。

 これは注意した方が良いかと思ったら、その男はホームの縁から落ちそうになった。

 「危ない!」

 私は彼の手を掴んで引き戻した。

 「すいません。ありがとうございます。ちょっと飲み過ぎなんで。ホームの縁からは離れて電車を待ちますよ」

 彼は笑いながらホームの縁から後退して行った。

 これだけ離れれば安心だろう……と思ったらそこで転んで、そのまま2番線の縁から線路に落ちた。

 私は慌てて駅員を呼んだ。

(遠野秋彦・作 ©2022 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦