2022年08月08日
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三百字小説『このみをささげる』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 教祖様の前に、子連れの女性が来ました。

 「信者4649号よ。おまえの忠誠はどれぐらいだ?」

 「もちろん、最高です」

 「なら証明してみせろ。この政治家は教団の敵だから暗殺してこい」

 「分かりました」

 「失敗したらどうする」

 「このみをささげます」

 「よかろう、ではいけ」

 そして女性は暗殺に失敗しました。

 「教祖様。失敗したので約束通り、このみをささげます」

 「なんだこの子供は」

 「私の娘、このみちゃんです」

 「おまえの身を捧げるんじゃないのかよ」

 「誰がそんなことを言いました?」

 「わし、ロリコンじゃないから子供は要らない。こいつは教祖を騙した罪で死刑」

 「そんな!」

 教団は今日も平和です。

(遠野秋彦・作 ©2022 TOHNO, Akihiko)

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