2022年09月05日
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三百字小説『トブルクの空飛ぶ仲間』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 リビアのトブルクには、飛行倶楽部があった。彼らの目標は、手製の飛行機で地中海を越えてクレタ島まで行くこと。

 クレタ人が彼らにアドバイスした。

 「クレタ島は遠くないよ。足を鍛えて人力飛行機で行けるって」

 そこで、飛行倶楽部はみんなで身体を鍛え、人力飛行機を製造した。

 郊外で何度も試験飛行を行い成功した。

 飛行倶楽部で最も脚力がある少年が人力飛行機に乗り込んだ。

 「では行ってくる」

 しかし、彼は途中で地中海に墜落し、漁船に助けられて戻って来た。

 「誰だよ、クレタ島は近いと言ったのは」

 「クレタ人だよ」

 「どのクレタ人だよ」

 「さあ」

 クレタ人は嘘つきだった。

(遠野秋彦・作 ©2022 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦