2022年10月31日
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三百字小説『ミイラ取りラボラトリ』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 我がミイラ取りラボラトリでは、ミイラ取りがミイラにならないように日々研究している。

 その結果、絶対にミイラにならない薬を開発した。

 ピラミッド内の盗掘除けの仕掛けが発動すると、仕掛けが止まった後まで時間を飛ばすのだ。

 さっそく我々はピラミッド内に入ってミイラを捜した。

 しかし、盗掘除けの仕掛けを発動させてしまった。薬を飲んでいるから大丈夫、と思って待つと目覚た。

 ミイラにならずに切り抜けたぞ、と思うと何かおかしい。

 時計を見ると一万年後だった。

 部下があたりを調べて言った。

 「この仕掛けは、川の水で動くようです。仕掛けが止まったのは川の水が枯れた一万年後のようです」

 ミイラにならずに未来になっていた。

(遠野秋彦・作 ©2022 TOHNO, Akihiko)

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