2022年12月27日
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三百字小説『地球の緑のおっかあ』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 僕の母さんは【おっかあ】と呼ばれていた。

 ある日、おっかあは言った。

 「私、昔は地球の緑のおばさんだったんだ。あの頃に戻りたい」

 しかし、僕は緑のおばさんの意味が分からなかった。きっと緑色の服を着たおばさんだったのだろう。でも、地球にいた頃はまだ若かったはずなので、おばさんだったとは思えない。

 とても謎だった。

 そしてすぐおっかあは不慮の事故で死んでしまった。

 思い切って僕は宇宙船の切符を買っておっかあの遺体を地球まで運んだ。

 そして、地球の植物の緑の葉っぱでおっかあを満たして埋葬した。

 地球の緑のおっかあになれて、きっと満足だろう。

 たぶん……。

(遠野秋彦・作 ©2022 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦